美容師男子×美麗女子
「あたし、正直?」
「うん、俺はそう思うけど。千咲のつく嘘は、分かるんだ」
どきりとした。
毎回核心をついてくる彰は、なんでも見透かすような目をしていた。
まさか、本当に見透かしていたとは。
年の功というやつだろうか。まだ20とちょっとのやつに、年の功なんてあるのか知らないけど。
「一応、千咲よりはちょっと長く生きてるからね。そんで、世の中の汚い所も知ってる。というか、それしか知らないけど。
千咲は、自分を守る嘘をつくよね」
彰の大きい手があたしの頭をなでた。
ふわりと優しい匂いに包まれる。
アルコールが回った体は疲れきっていて、眠りにつこうとしていたけど、あたしは頭を回転させた。
「だから、千咲を知りたいと思ったんだ。ちょっとこの子は他の子と違うなって」
彰の瞼が閉じた。
長いまつげが綺麗に揃っている。
「おやすみ、千咲」
「あ、ちょっと!」
「俺はもうなにも喋らないから。寝る」
頑として動かない彰を説得するのは無理そうだった。
あたしは、自分を知らなさすぎる。
他人の目から見た“あたし”を聞いて、はじめて“あたし”が分かるんだ。
自分を守る嘘をつく。
急に、自分がすごい小さい人間じゃないかって思った。
そのままあたしは、酔いに負けて寝てしまった。