美容師男子×美麗女子

□花の女子高生











□ □ □



花の女子高生、なんて言うけど、そんなのはただの妄想にすぎない。

あたしはそう思う。


だって、あたしは女子高生だけど、花なんてないもの。

不幸真っ只。



千咲。それがあたしの名前。


「ねぇ、アヤカちゃん、アヤカちゃんは俺だけのものだよねー?」

「そうに決まってるじゃん、もう」


花、なんてないのに、あたしの名前は千咲だ。

何が咲くのか、名づけた奴に聞いてみたいものだ。


「アヤカちゃーん、次はこっちお願いしまーす!」

「はーい。じゃあトモさん、また今度ね!明日もアヤカの為に来てくれる?」

「勿論だよ、俺だけのアヤカ」


真っ赤なシルクドレスを靡かせて、あたしは立ち上がった。

じっとりと他の人間からの視線を受ける。


あぁ、早く睡眠にありつきたい。

あ、でも帰る家なんてどこにあったんだっけ。


私は真っ赤なピンヒールを鳴らせながら、ご指名してくれた客の前に立った。


< 2 / 210 >

この作品をシェア

pagetop