美容師男子×美麗女子








24時が過ぎた、真夜中。

扉が開く音がする。

この重い足音は、春樹くんのものだ。


「千咲」


あたしはごろりと寝返りして、春樹くんに背を向けた。


「起きてんだろ、この狸寝入り」


あたしの頭の横に座る春樹くん。勝手に座るところが春樹くんらしい。


「髪、乾かさないで寝ると風邪引くぞ」


あたしの髪を掬って、指で通してから春樹くんは立ち上がった。


「おやすみ」


そう言って、春樹くんは部屋を出て行った。


本当に、春樹くんは残酷だ。

きっと、これから身内になるから今のうちに仲良くしようって魂胆だと思うけど、こんなんじゃまるであたしを期待させるみたいだ。

もともとお姉ちゃんしか見えてないくせに、あたしに優しくするのが、1番最低。

いっそのこと、あたしを正面から突き放してくれればいいのに。



どんどんあたしの心の負の連鎖が広がっていく。



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