仮からはじまる
第八章

結城真一が好きかも…?
なんて考えるとどきどきするけど。
そればっかり考えてるわけにもいかないのよね…。

朝からどんよりした気持ちで学校に向かう…。
ともちゃんに会ったらどうすればいいのかしら。
ずっと考えてたけど、答えなんてでないし…。
同じクラスだから絶対に会っちゃうわよね。

駐輪場に着いたら、人垣はできてなくて。
結城真一がそこにいないことを知るの。
そんなふうに知るのも変なことだけど。
本当にいつも人垣ができてるんだから。

結城真一にも、どんなふうに会えばいいのか…。
考えたら緊張するわ。

あの優しい笑顔が頭に思い浮かんで…。
思わず顔が熱くなるのに気付いて、慌てて振り払う。

ああ、ひとりで考えてひとりで赤くなるなんて。
あたしって救われないわ…。

でも…。
あたし、なぜか視線を集めてる気がする…。
見られてるような気がしたり、小声でこそこそ話してる女の子たちが気になったり。

気のせい?
それにしては、露骨過ぎない?
学年中のひとがあたしを見てる気がする…。

なんで?

でもそれは気のせいなんかじゃなかったの。
教室に着いた途端、クラスの女の子に一斉に囲まれる。

「ねえ、御崎さん、結城様と付き合ってるんでしょ?」
「本当に付き合ってるの?」
「前は全然知らないみたいだったのに、どうして?」
「いつのまに?」
「いつから?」

次から次へと矢継ぎ早に質問されて詰め寄られる…。

距離が近いのよっ!!
もっと離れてくれないかしら…。

「え、えっと、あの…」

どうしてこんなことになってるの?

確かに、昨日ともちゃんとあきなちゃんの前で付き合ってるって言われたけど、まさか昨日の今日でこんな大勢の人たちが知ってるなんて、そんなのおかしいでしょー!!

あの不良グループたちの前で言われたときは、こんな騒ぎにはならなかったのにっ!!

ちらっとともちゃんの姿が見えたけど。
知らない振りして通り過ぎる…。

ちょっとっ!!
あなたのせいでしょー!!

「ねえ、御崎さん、どうなの?」

こっ、これは…。
ああ、もう…。
どうしたらいいの!?
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