青のキセキ

【大和side】

あれから数ヶ月。


仕事のない週末は、必ずと言っていいほど出てくるようになった綾。


土曜日、美空と過ごしたホテルからマンションに戻り、もう一度シャワーを浴びる俺。


いつも使っているシャンプーの香りと違うことに気付かれると困るから。






大体、14時ごろに綾が来る。


それから、一緒に映画を見たり、買い物に出たり。


夜は綾の作ってくれた料理を食べたり、外食したり。




夜一緒のベッドで眠ることはあっても、未だに綾を抱くことは無い。












「大和、あなたが私を抱かないのは赤ちゃんが欲しくないからなの?」


いつだったか、悲しそうな目で綾が言った。




「不妊治療にも非協力的だし...」



週末を一緒に過ごすようになって、土日でも開いている病院へ行こうと言われたこともあった。


だが、幸い、近くにそのような病院は無かったため、そのままになっている。



一向に綾を抱こうとしない俺に、彼女は言った。



「そう言う訳じゃない。ただ...」



言葉が続かなかった。何て言えばいい。他に好きな女が出来たと言えば、綾は納得するのか?


いや、そんなことを言おうものなら、綾は嫉妬に狂い、相手の女のことを根掘り葉掘り聞くだろう。プライドが人一倍高い綾のことだ。下手をすれば、興信所等を使って美空のことを探し出そうとするかもしれない。








「なら、どうして...まさか...」


ハッとして綾が言った。






「他に好きな女が出来たとか言うんじゃないでしょうね...?」

俺を睨みつけるようにして聞く綾。



「そんなこと、許さないわよ、大和。もし浮気したら、相手の女、殺すわよ?」




綾の、蛙を睨む蛇のような目に一瞬背筋が凍ったように感じた。



今はまだ言えない。


まだ、美空とのことを告げる時期じゃない。



もう少し待つんだ。



綾の気が落ち着くまで...。




















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