パパはかわら版
橋龍「何だ、そのパパというのは」
幸江「お父さんのことを、海の向こうではパパっていうみたいよ」
橋龍「海の向こうって。ここは、日本だ。それに、私は、君たちのお父さんではないし、ましてやパパでもない。君たち本当に、自分たちのしていることが分かっているのか。本当は、ちゃんと親がいるんだろう。いるんだったら、親のところへ帰りなさいよ」
良江「私のお母さんは、先月なくなりました。お母さんは、気さくで、毎日おいしい料理を作ってくれました。家は貧しかったのですが、私は毎日が楽しかったです。お父さんが誰なのかというのは、何度か聞いたのですが、なかなか教えてくれませんでした。それでも、死ぬ間際にお母さんが、日本橋で、瓦版をやっている橋龍さんのところへ行きなさいと、言いました~」
幸江「なるほどね。それは、お父さんがパパだということをいったとしか考えられないわね」
良江「そうなんです。きっと、お父さんも私のことを、どこかで見守ってくれていて、あったときには、きっと抱きしめて、お母さんは残念だったね。私が君を育てて上げるといってくれるものと思っていたのです~」
初江「なんか出来過ぎた話ね。暗に、パパがあんたのお父さんで、育てる義務があるということを、入れ知恵されたみたいな話。大体、顔が似ていないのよ。親子って、多少は、似ているでしょ。多少は」
良江「ちょっと、初江さん。私のことを悪く言うのはかまいませんが、お母さんのことを悪く言うのは、許しませんよ。お母さんはね~、いつも私のことを考えてくれていたんです。そのお母さんがお父さんのところへ行きなさいといったんです~」
初江「いくらあんたのことを四六時中考えていたからっていって、嘘いっていいってことはないでしょう。あんたは、番屋にでもいった方がいいんじゃない。とにかく、あんたみたいなのは、いい迷惑なのよ。パパも現実を認めるにしても、証拠が必要でしょう。証拠が」
良江「そういう初江さんはどうなんです。なんでここにいるんですか。似てない、似てないと私のことを言いますが、あなたも似ていませんよ」
初江「私と顔で勝負しようって言うの」
良江「違います。初江さんのお母さんは、どうしたんですかといっているんです。はっきりお父さんがパパだといったんですか」
初江「私は、、、 お母さんはずっと前に死んで、、おばさんが、、、」
良江「え~え、そんなんじゃ、誰がパパなのかわかんないじゃないですか。人のことどうこういえるような、立場じゃありませんね。まあ大体、初江さんじゃあ、おばさんに捨てられたというのが落ちなんじゃないでしょうか」
初江「あんたねえ。いいたいこといったわね」
良江「なんですか~。私のお母さんと初江さんのおばさんとでは、信用度が全く違いますね。それに、そのおばさん、嘘ついているかもしれない」
初江「ふざけんな」
幸江「まあまあまあ、そんな、喧嘩しても誰も得しないよ。お父さんも見に覚えがあるから、ここに置いてくれているわけだし、証明されたあかつきには、はい子供、認知しますっていうことでしょ」
良江「私は、かまいませんよ。自信あります。初江さんはかなり怪しい気がします。いいんですか」
初江「かまわないわよ」
幸江「ということになりましたよ。パパ」
橋龍「、、、」
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