秘密の時間



その聞き方に怒りや憎しみはないにしろ、やっぱり単刀直入に聞いてきた事柄に、なぜか鼓動がいやな音をたてる。



いや、でも俺は間違ったことはしていない。



だったら胸を張って昨日の出来事を伝えればいい。



そう思い、正直に昨日の事を常務に伝えた。



すると常務は少しすまなそうな顔で詫びを入れる。



「すまん、大橋くん。咲季の悪い癖なんだ。ちょっと男にもだらしないとこがあるからな。

まぁ、大橋くんは真面目だと評判だから安心はしていたが…、


君も男だからね」



最後の台詞に男の厭らしさを含めた常務の言葉は、何だか少し寂しくも聞こえた。



妹をそこまで心配しているなんて、素晴らしい兄妹愛だと思ったが、それだけではなさそうだ。



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