秘密の時間



こんな時ですら巧さんは優しい。



きっと微かに震えていた私の指先に気が付いたんだ。



だから『入ろうか?』なんて言ってくれたんだ。



そう思うと嬉しくて涙が溢れ出そうになる。



だけと、泣く訳にはいかない!



今泣いたら変な誤解をされてしまうかもしれない。



それだけは避けたかった。



私の気持ちはさっきの話を聞いても変わらないし、かえって彼を悲しい過去から私が連れ出せたらな。なんて思いもした。



いつも巧さんに守られてばかりな私。



会社でもおうちでも、彼の優しさにいつも包まれていたんだと思う。



いつだって私が困っていれば、それとなく助けてくれた。



それはこうやって付き合う前から変わらない。



でも、私はどうかな?


彼の為に何かしてあげているのだろうか?



いつも頼ってばかりの私は本当に巧さんに相応しい彼女なのかな?



ただの甘えん坊じゃあ、私はいつか巧さんに愛想をつかれてしまうんではないのだろうか?


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