秘密の時間
「取り敢えず、ここは不味いから移動しようか?」
「…うん」
葉子ちゃんが抱き締め返してくれて、そう呟く。
私は声にならない声で返事を返した。
ゆっくりと私の背中を撫でる葉子ちゃんの手。
その手のお陰で落ち着いてきた私。涙も癒える。
「じゃあ、行こうか!」
葉子ちゃんのその一声で、私達はトイレから出てお店に向かった。
たどり着いたのは、行き付けの居酒屋。
ガヤガヤと煩いそこは今日も大繁盛しているらしい。
まぁ、忘年会シーズンだし値段もリーズナブルなここはお料理だって美味しいし、このガヤガヤも頷けるけど…。
もうちょっと静かな所が今日は良かった。
「ここじゃあ…ゆっくり話し聴けないね…」
葉子ちゃんの呟きが私の耳に届く。
まだ入ったばかりの居酒屋の入り口。
「やっぱ違うお店行こう」
そう言葉を発するより早く私の手を取ると、踵を返し店を出ていた。
で、たどり着いたのは、客も疎らな喫茶店。
葉子ちゃんはそこで私の話しに耳を傾けた。