シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「イチル人形や、さっきの"ねえさん"の出現が、特定の人間にメッセージを送るもので、さっきの見えない敵はただの"運び屋"的存在だったとして。

メッセージを送りたい対象は芹霞だ。イチル人形も、"ねえさん"も…芹霞だから意味を持っている。そして、君が今まで忘れていたものだ。だからそれを思い出せと芹霞に…いや、芹霞と櫂に。

そして君は現実に思い出してきている。つまりは計都の目論見は成功しつつある状況ということ。ただ、見えない敵の総指揮官は計都だと言い切るにはまだ情報が足りなすぎる。見えない敵はやはり皇城のもので、皇城が手助けしていたとも考えられるし。教義上対立関係にあっても、利害が一致すれば手を結んでいるかもしれないし」


黄幡会と皇城家。

何が利で何が害なのかはあたしにはよく判らないけれど。



イチル人形を持ち出して、計都は――

一体何をイチルから聞いていたんだろう。


何を知っているんだろう。

何が…隠されているんだろう。


言いたいことは、直接あたしに言えばいいのに。

あたしは二度目の桜華の校舎で、"マスター"たる子供にも、計都にも会っているんだ。

その時にでも言えばいいじゃないか。



「ナイスな状況!!」


突如玲くんの嬉しそうな声が響いて、現実に返った。


玲くんの視線の先には…自警団に連行され途中の、泣き騒いでいる数人の少年が居る。

数人の自警団は、白いボックスカーに少年達を放り込もうとしていた。


「僕達を捕まえに自警団が来てくれないのなら、こっちから"自己申告"してあげようか。ふふふ」


途端、えげつない顔つきになるミス桜華。


それに桜ちゃんが伴って自警団に襲いかかり、地面にバタバタ倒れる自警団員。助けられた少年達は、頭を下げて逃げ去った。

所要時間数分。

移動手段GET!!


しかし玲くんの目的は、車奪取ではなかったらしい。

ひとりの自警団を車体に押し付け、笑顔で接していた。

まるで美少女が、男を口説いているかのような図だ。


強引なお姉さまも、素敵…。


「僕達を更正施設につれていってよ。ねえ、僕…男なんだ」


カツラをとってにっこり笑う玲くん。

なんと、バラシますか!!


「このままだったら、道を外して悪いことしちゃうよ、ね? こんな風に」


そして依然にこにこ笑顔のままで、ピースサインをしたかと思うと…その角度を変え、勢いつけて自警団員の両目に突き刺したんだ。
< 1,040 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop