シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


羅侯(ラゴウ)を崇める黄幡会。

羅侯(ラゴウ)を滅する皇城。

羅侯(ラゴウ)とは無関係だったはずの紫堂。

五皇。


全員が、羅侯(ラゴウ)擁護側となっている現実。


しかし、何だこの胸のひっかかりは。


現況、4者が迎合しているとは思えないんだ。


対立関係を示した勢力図があるはずなのに、その図が描けないもどかしさに苛立ってくる。


俺は何を見落としている?


「翠……」


俺は、翠の名を呼ぶ。


「お前の兄が変貌した二ヶ月前。それ以前は、皇城の…羅侯(ラゴウ)を敵とするという教えに対し、疑問を感じていた様子だったか?」


翠は首を横に振ろうとして、少し考え込んだ。


「そう言えば昔、兄上に言われたことがある。"お前は、皇城に染まらず、そのままでいて欲しい"って。だから俺…それに甘えて全然勉強してなくて。

御前…俺の父上に死に、変貌した兄上が皇城当主になったから、力になりたいと慌てて朱貴に教授して貰っていたから……。

皇城に裏っていうの、あるのかも。だけどそれが教義と真逆だったら、皇城の存在意義がないってことじゃないか!!」


確かにそうだ。


「皇城に秘密があるって…そう言えばさ」


腕組みをした煌が、玲の父親を顎で促した。


「そいつが突き付けた選択肢のひとつにもあったよな」


――皇城雄黄の変貌でも、皇城家が抱えている秘密でも、皇城翠の強くなる方法でもいいぞ? 


……皇城家の抱える秘密は、事実あるわけだ。

俺達は聞いてもいないのに、口を滑らせたようだ。


皇城の秘密が、雄黄の…五皇の盟約に繋がる"揺らぎ"となりえるか。


雄黄以外に、皇城の裏を知り得る関係者がいるとしたら、周涅と、朱貴……だろう。

しかし、雄黄が元々教義に反感を抱いていたとすれば、それは当時の当主……御前と対立するということ。


「なあ、翠。周涅は…御前と雄黄、どちらについていたんだ?」

「御前、御前、御前!!! 周涅は御前の人形!! 御前の片腕だからって、兄上にぞんざいな口をきいてたんだ!! 兄上だから、それを笑って許してたんだ。俺、何度も周涅に怒鳴ったんだぞ」


周涅は雄黄に対して忠義心はない。

むしろ御前派筆頭が何故、御前亡き後、雄黄に従う?


宿主を変えて…寄生をして、納得出来る男か?
< 1,082 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop