シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「久涅だというのなら、なんでこの場にいるんだよ」


またもや愚鈍の俺は、状況説明を白ニャンコに求める。


「だから言っておろう、"協力者"だと。表世界に刺激された電脳世界の猛攻を受けた裏世界を救うには、救おうとする指導者と、電脳世界の力に耐性がある者が必要」

「玲でもいいじゃねえか!!」

「たとえ玲とて、虚数の力に転じられればダメージを受ける。玲の特性は、電脳世界の力を弾くものではなく、一度吸収して自らの力に制御できる点にある。難点は、体内に取り込まないといけないため、肉体の許容を超えた力を受けすぎれば、制御の前に臓器は…肉体は散る。ましてや今の玲はあの姿。表世界の玲の姿とて、心臓に負担がかかりすぎる。たとえ、"相殺"のコツをつかもうとも、1つの世界を滅ぼそうとするだけの大きな"虚数"を打ち消せるだけの力を、瞬時に作り出すまでに至っていない」

「"相殺"……」


俺は櫂を見た。

確か玲の親父が、櫂の遺伝子は相殺の力がなんちゃらと言って無かったっけ?


「坊の"相殺"力は、まだ目覚めておらぬ。坊と血の繋がりがある玲が、特訓と経験によってその片鱗を目覚めさせている。つまり、相殺の発現力から言えば玲の方が上」


櫂は唇を噛みしめ、仮面の外套男を睨み付ける。


「つまりここでは、肉体に影響を受ける前に、攻撃力を瞬時にゼロにしてしまう"無効"が、得策な訳だ」


理屈はわかったような気はする。

わかったように思わないと、緋狭姉に怒られる…。


「なぜ、その黄色い姿なんですか」


櫂が緋狭姉に聞いた。



「裏世界で"生かされた"者は、この姿で表世界で"使命"と称して適性を試される。それが過酷である代わり、裏世界は短期にてその者を受け入れる。逃げによる出戻りでなければ」

白ニャンコは続けて言う。


「なにより急いで、共に裏世界に駆けつけたものでな。久遠と久涅は」


同じ肉体に宿るもうひとつの存在を、まるで他人事のように口にするニャンコ。

櫂が声を荒げた。


「久遠が、久涅を許すはずはない!! 共の行動なんて!!」

「裏世界が潰えれば、被害は表世界にも及ぶ。芹霞を危険な目に、久遠がさせると思うか」


やけに冷静な緋狭姉の声。

すぅっと、赤い目が久遠の瑠璃色の瞳に変わる。


「久遠にとって優先すべきは、私情より芹霞だ」


そして瞬時に変わる。


激情の赤。

緋狭姉の色へと。

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