シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



そんな玲くんが、合間に怒るのは……生きていたらしい、玲くんの父親。

玲くんがお父さんになにを言っているのか、玲くんの感情を知りたかったあたしの前に、紅皇サンは言った。


――映像、玲サイドのみ。音声をつけろ。


櫂は煌とハゲネコ様と共に、塔に入ったところだった。

塔の外の裂け目からは、黄色い蝶が出るらしい。

そして……久涅があの黄色い外套男だと知り、そして櫂を助けるために裏世界にやってきたらしい事実は、あたしはなんとも複雑だった。


できるのなら、あたし達の視界から消えて欲しい。

だが、今。

櫂を守れるのは、あたしではなく……久涅だ。

彼がどう動くか不安ではあったけれど、ハゲネコ様が従えているらしいから、今はハゲネコ様のお力にすがることにしよう。

ハゲネコ様の案内があれば、ひとまず櫂達の映像は消えても大丈夫。


玲くんだけの映像になった途端、玲くんの声が響いた。


玲くんとお父さんの確執は強いものだった。

リスだから邪険にしているのかと思ったけれど、あたしは息子だと認識していると思う。

拒絶ばかりしあう親子。

玲くんは、リスの姿でも仮面をかぶる。

あたしが一番嫌いな、心を隠すような仮面を。


きっと――

玲くんは、お父さんに愛されたいのだと思うんだ。


自分に気づいて欲しいと、玲くんは言っている。


それを拒絶するお父さんを詰るけれど、玲くんは気づいているのだろうか。

お父さんもまた、仮面をかぶって拒絶をしていることに。


ねぇ、このふたり。

似たもの親子だよ。


だったらわかり合えることはないのかな。

玲くんの苦境の手助けとなる和解はありえないのかな。

本当にお父さんは、玲くんの思っている人物像なのかな。


あたしは由香ちゃんのように、塔の内部の断面図とかプログラムとか見ても、さっぱり意味がわからないし、素人にはそこに重要性を感じない。


あたしが気になるのは、どうしてお父さんが玲くんを認めないのか。


あたしには――

玲くんに悟られまいとする"なにか"があるように思えて仕方が無い。

触れさせたくないから、玲くんそのものを拒絶しているように思えるのは、あたしの妄想?


そんなことを思っていた中、映像は今――。

石碑を守っていたあの巨乳の忍者……もとい覆面を外せば美女が、リスの玲くんの前に現われたところ。

女忍者が喋れば、ぶるんと胸が揺れる。

揺れる度に、玲くんが驚いたようにその胸をちらりと見るのが、なんとも面白くない。

あたしだって、成長すれば……。


「……神崎、そこで胸のマッサージはいいから。そういうことは師匠にして貰いなさい」


げほっという咳が聞こえたのは、おそらく桜ちゃんからだ。

< 1,344 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop