シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


『ラーブ、ラブリー、ひいちゃん』


動画を見た後、すっかりその存在感を無くしていた怪声。

突如、あの情報屋の声が響き渡った。


第二弾があるらしい。


「むふふふふふ。開こう!!! 

今度はどんな腐動画かな~」


最早由香ちゃんは止らない。


あの警戒心は何処へやら。

今は積極的に、開封に突き進んでいる。


これだけの嬉しそうな顔を見ていれば、最早誰も彼女を止められない。

否、止めても由香ちゃんは止まらない。


腐…恐るべし。


ふんふんふん♪


鼻歌を歌いだす由香ちゃん、楽しそうだ。

玲くんと桜ちゃん…微妙だ。


「ん!!!!?」


その時、由香ちゃんが大声を出して…iPhoneを床に落とした。


「どうしたの、由香ちゃん!!!?」

「あ、ああああああ」


由香ちゃんの様子がおかしい。


あたしは由香ちゃんの体を押さえるように支え、玲くんが慌てて画面を見る。


あたしも見る。

桜ちゃんも見る。


それは動画のダウンロードに至る前の、メール画面だった。



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差出人<aoao@ares_ioa.com>
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宛先<hihi@teraikemen.net>
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あはははは~
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はろはろ~

カイクン×ワンワン


カ・ワ・ユ・ス☆


いやんな愛を感じるね~。


愛はネットを通せば
たった1秒で貴方の元に。

届いたなら10秒以内で
愛をすぐ返してね。


あはははは~。


愛と幸せを運ぶ

貴方のア~オ☆


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真っ青な画面に、水色の文字。



「ア、アア…アオ菌に冒されたッッ!!」



ムンクの叫びと化した由香ちゃんの悲痛な声が響き渡る。

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