シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「氷皇の"ヒント"があるまで、俺には"第4層"の意味が判らなかった。そして恐らくそれは、久遠にも。ただあいつも独自に司狼や蓮に指示していたならば…レグの日記から何らかの情報は掴んでいたはずだが。

即ち…玲の暫定的プログラムを使って、魔方陣を傷つけずに周囲だけを器用に切り離して、堅固な下層に落とすという具体的な発想は、俺にも久遠にもなかった。制御された力のように局所だけを切り抜けられる爆発が可能など、思ってもおらず、取り急ぎ全員を魔方陣に集めることしか出来なかったのが現状だった。

後で聞けば、魔方陣切り離しは、お前が先導したというじゃないか。

大体。暫定的とはいえ…玲が作ったプログラムに割り込んで、音声にて爆発させる独自性を急遽織り交ぜて、改変出来たのも…普通ではありえないだろうし、それに対して玲が驚いてもいなかったのもおかしい。

玲が何処までお前を理解しているか判らないけれど、少なくとも玲は、お前が…常識外の同じ側の人間だと言うことを見抜いているはずなんだ」


「がはははは!! そうか、それか!!!」


隠す気もないらしい。


「そして毛を突如剃り落としたこと」


俺は聖を見た。


「それは…直後現われる"誰か"との"合図"だとすれば? お前の素顔は時間と共に隠れてしまい、毛を剃らぬ限りは別人になる。毛の成長…特異体質を上手く利用すれば、それは一種の変装(ギミック)となる。つまり…2つの世界に生きやすくなるじゃないか。 

聖…お前は、クマの裏の顔は知っているが…表の顔はよく知らなかったんじゃないか? 即ち、今のこの姿は…」


「この"クマ"、毛以外…特徴あらへん。初めて会うっちゅう時、こんな顔で…何をもって"真"と判断するんや」


ぼそっと…聖が呟いた。


「がはははは!!! そういえば『白き稲妻』もあっちの嬢ちゃんも…そう言ってたな、俺のこと。イケメンだって言っても、全然信用してなかった。間近で顔付き合わせていたのに」


「そうだね…クマの毛がない顔…師匠は純粋に驚いていたねえ…」


遠坂が、思い出したようにそう言った。


「だとしたら玲は、そこまで深くクマを詮議していたわけではないんだな。だけど…真っ当な表世界の住人だとは思ってはいまい。思っていたら…紫堂の裏など協力させるものか。

それに、最後のあのゲームに関しても…クマを疑っていなかったし…。まあ…疑う余裕もないか、あんな忙しい作りならば」


「櫂。何でワンコゲームが出て来るんだ?」


そう煌が首を捻るから。


「ああ、あれは多分…このクマが作ったんだろうよ」


「「ええええええ!!!?」」


遠坂と翠が同時に声を上げた。


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