シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


おや……?


それは一瞬。


あたしの顔の両横に、玲くんの腕が下ろされ、真上に居る玲くんの体が沈んでくる。


何、何、何!!!?


玲くんは両肘をつき、顔1つ分の至近距離で止まった。



身体はぴったりと密着。


まだとろりとしていたお顔は至って真剣で、あたしの顔を覗き込んでくる。


妖しい色気を放つ、下膨れの王子様。


ぶわりと襲いかかる色気に鼻がむずむずしてくる。



玲くん、こんな近い距離から…

一体何の御用ですか!!!!!?



頭がパニックで、汗だけが流れ落ちる。

心臓がどくどくと早鐘を打ち続ける。



「好き……。

本当に…好きなんだ…」



この体勢で…

いきなり何を言う!!!


そんな熱っぽい目を揺らして、あたしを見ないで。


あたし…免疫ないんだってば!!!


とにかく…玲くんは、下膨れでもお色気が凄いんだから!!!

お願いだから…あたしの心臓壊さないで!!!


「信じて…」


しかし真剣なその目の輝きは。


とても苦しげなもので。

とても悲しいもので。


同時に…激しいもので。


夢のあたしに言っているのか、現実だと認識できている部分があるのか、それは判らないけれど。


縛られる。

目をそらすことができない。



「僕は君を…裏切らない。

強くなって…君を守るから。


だから――…

僕から…離れないで…。


離れていかないで…下さい…」



悲壮感漂うその顔。


掠れたような声を絞り出した玲くんに、胸がきゅううと切なく疼いた。


< 349 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop