シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



どくん、どくん。

心臓がけたたましく鳴り響き、耳鳴りまでしてきそう。


櫂が何かを叫んでいるが、俺の耳には入って来やしねえ。

よからぬ不安に、吐き気がする。


チビの制裁者(アリス)が手を動かした時――


ごろり。


ソファに座って新聞を読んでいた、若い男の首が…床に落ちた。


瞬時に変わる、視界の色は。


何処までも赤。

何処までも真紅。


生臭い血の色が部屋に充満する。


おい…。


今…

チビの俺…何したよ…。


「煌、見るな。

見るんじゃない!!!」


思わず、よろりと崩れかけた俺の上体。


櫂は俺の頭を抱きしめるようにして、光景を見せないようにするけれど。



「見なきゃ…」



俺の目から、自然と涙が零れた。


「駄目だ…煌、この先は…見るな、耳も塞げ!!」


櫂は…泣いていた。


もう確信した。



此処で起っているのは…


櫂が目の当たりにした――

8年前の最悪の現場。


犯人である俺が知らずして、

のうのうと生きていくことは出来ない。


逃げることは許されねえ。


俺は…そう思う。


俺が…俺として生きる為には。

皆の元で、芹霞の元で生きたいと願う限りは。



「俺の――ケジメだ。

見させて…くれ」



「駄目だ。それだけは駄目だ!!


頼むから煌…


此処は引き下がってくれ!!」




「お母さーーーーーんッッ!!」



床に…鈍い落下音。


視界の横が…真紅に染まる。





「お父さーーーーーんッッ!!!」



チビ芹霞の泣きじゃくる声。



俺は――

櫂の身体を突き飛ばした。


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