シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


忘れられぬ残酷な場面に耐え続け、

犯人を許して新たな道を模索することは…


強い、以外の言葉はねえよ。


狂わず逃げず見捨てず。

俺と共に…同じ未来を向いていてくれた。


俺が求めていた強さは…

こんなに俺の近くにあって。



だとしたら俺だって。


これを耐え抜いて、新たな道を切り開こう。


制裁者(アリス)に逃げるのではなく、制裁者(アリス)であった自分を受入れて、俺でしか出来ない道を模索しよう。

俺だから出来る道を模索しよう。


二度と――

制裁者(アリス)には戻らねえ。


俺は――

多くの奴らに支えられて生きてきた。


櫂と緋狭姉だけじゃねえ。

ぼんやりとでも思いだしているらしい芹霞も、玲も桜も…俺を取り巻く者全て。


皆のおかげで、今の俺が居る。

今の…

制裁者(アリス)ではねえ俺が居る。


こんな残虐なことしでかして、

此処まで皆を慟哭させて…。


それでも更正するチャンスをくれたんだ。


本当は殴り殺したいだろう。

切り裂きたいだろう。


その心を抑えて…

共に進む道を選んでくれたというのなら。



それでも――…

俺を大事な幼馴染と言ってくれるのなら。


俺は…逃げては行けねえんだ。

俺は自分を変えていかねえといけねえんだ。

未来を変えていかねえといけねえんだ。


自分自身が卑屈になるのは――

消えればいいと思うのは――


――逃げだ。



「悲劇は――

2度と起こさせねえ」



そう強く言うと…

櫂は俺の肩に…手を置いて。



「ああ。もう…繰り返しては駄目だ。

辛さと苦しみの螺旋は…

何処かで絶ち消さねば…」


そう…言って、静かに辺りを見渡した。


景色の中には…緋狭姉も何もなく。


真紅色までも消え去って。


何事もなかったことのように…今までの景色が蘇る。


8年前の…俺の知らない神崎家に。


< 427 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop