シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「ニノ、このまま見ているだけは…CLEARになるか?」

『お答え致しかねます』


ならないらしい。


ニノの答え方は…ある意味判りやすい。

ゲームの核心に触れることはぼかすんだ。


「このゲームでは何をすればいいんだ?」

『お答えします、櫂様。守ってはいけません』


定義(ルール)となる基軸には…YESかNOかで即答する。


"守ってはいけません"


やはり、基本はそれなのか。


「何を守ったらいけないんだ?」

『お答え致しかねます』


「何故俺達に攻撃してこないんだ?」

『お答え致しかねます』


「こちらから攻撃してもいいのか?」

『お答えしかねます』



「ニノ、それじゃあ判んねえぞ!!!」


煌が怒鳴ったけれど。



「いや、煌。それで十分だ」

「は?」



「ニノ、もし"守った"ら…どうなる?」


『お答えします、櫂様。

永遠に続くだけです』


俺は薄く笑った。


視界に拡がる光景は…また最初に戻ったようだ。


懐かしい…俺の思い出の中の神崎家。

母親が死んでからは、この家が俺の家だった。


覚えている。

色も匂いも。

――神崎家の皆の笑い声も。


だからこそ"あの日"刻まれた衝撃は、今も明確に記憶に植え付けられている。


「櫂…?」


揺れる褐色の瞳が向けられている。

青白い顔はまだ強張ったまま。


そう簡単に…克服など出来るものではない。

だけど…克服しないと次に進めない。


それは…煌だけではなく俺も同じこと。


俺は、煌に言った。


「煌…何となく判った。このゲームの趣旨」

「え?」


「ニノが…ヒントをくれた」

「は? 殆ど"お答え致しかねます"が!!?」


「ああ。裏を返せば…そこがミソになるということだ。攻略の核心のものについてはニノは返答出来ない。だとすれば、答えられないことに意味がある」


「意味…?」


「"守ってはいけない"のが基本であるのに、"守ってはいけない"対象を教えられないということは…それを俺達が見つけないといけないということだろう。

"攻撃"に関して俺は対象をわざとぼかして聞いた。攻撃されることも攻撃することも、その可否について答えられないということは、そこにも意味がある」


――何故俺達に攻撃してこないんだ?

――こちらから攻撃してもいいのか?


「攻撃してこないことに意味があり、場合によっては…こちらからの攻撃も構わないということ」


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