シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

そして計都。

"約束の地(カナン)"崩壊の脚本を、"ディレクター"たる計都が書いたというのなら、そこから生き伸びた芹霞との接触は、偶然とは思えず。


更には朱貴と氷皇…五皇の領域に乗り込んでこれるのは、久涅の無効化の力によるものだけではない気がするんだ。


僕は意識がなかったけれど、過去、久涅なしで計都が堂々と氷皇の領域たる理事長室に乗り込んできたというのなら。


計都もまた、その力は未知数で。


クチュン。

クチュン。


クオンはまだくしゃみをしている。


久涅と計都が来たのに、クオンは何をしていたんだ?


「風邪…じゃないと思うよ。一回窓から外に出たけれど、戻った時は何ともなかったし」


クチュン。

クチュン。



「おおい、クオン大丈夫か? 神崎、どんな埃だらけの処を通ってきたんだよ」

「……別に普通の廊下だけど…」


何でくしゃみが止まらないんだ?


ふと見ると…クオンの鼻が、僅かに黄色くて。


そして――。

芹霞の服にも同様な…黄色い粉みたいなものがついていることに気づいた僕。


沢山ではない。

本当に微量だ。


指で取れば細かい粒子。


チョークでもなさそうだし…何だこれ…。


特に匂いはしない。


シトラスの香りを発しているわけではないようだが…、クオンのくしゃみはこの粉を吸い込んだせいじゃないだろうか。


そんな推測に基づいてクオンの鼻の頭を指で拭き取れば、案の定…くしゃみは止まる。


香水と…黄色い粉は関係があるんだろうか。


芹霞は…何で多くを語らないのだろう。

"去り際"以外に、何かを言われたのは間違いない。


芹霞のこと?

僕のこと?


嫌だよ、擦れ違うのは。

久涅の言葉より、僕を信じてよ。


その時カチャリとドアが開いた。


「顔が赤い。やはり熱出始めているぞ、無理するからだ」

「大丈夫だって。まだまだいけるから」


言い争いをしながら入ってきたのは、紫茉ちゃんと朱貴だった。


「あ、芹霞ッッ!!!」


満面の笑みで芹霞に両手を広げた紫茉ちゃん。


「……。紫茉ちゃんッッ!!」


一瞬、不可解な躊躇いを見せながらも、いつものようにそれに応えて両手を広げた芹霞。


………。

おかしいのは…僕に対しての態度だけ?
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