シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「ば、化け物!!?」


対して翠は、いつもの倍以上の怯んだ声を出した。


「小猿。お前《妖魔》だとか変なもの相手にしてたんだろ? それだと思え」

「俺は!!! 《妖魔》退治の実戦なくして位階を貰ってるんだよ!!」

「威張るな。ならやめるか? 引き返すなら…「行く」


くすりと笑ったのは…俺ではなく、情報屋。


そして、クマが立ち止まる。


「おお、大勢で来た来た。がははははは」


膨れあがる瘴気。

それは…殺気の塊。


何が現われたのか判らず。


「あ、そうそう。裏世界で、俺達はお前さん達の"戦闘補助"は認められていない。冷たいようだが、戦うのはお前さん達だ」


俺はクマに、鼻で笑う。


「元より…覚悟の上」


だからこそ、拳銃が渡されたのだろう。

"危険"時には力になれないという証として。


そして忘れてはならないのは、そんな危険の中を…情報屋は無論、クマは傍観出来る立場にいること。

クマには危険性はないというような、そんな妙な余裕めいた自信があること。


それならそれでいい。

今、俺達に必要なのは…強さだから。


だったら、自分達の力で乗り切ってやるだけだ。


「おっさん達は手出しするなよ。行くぞ、小猿」

「ええええ!!!? 行くの、行っちゃうの!!?」

「自信持て、翠。何の為にあのゲームをしていたんだ。限界、突破出来たろう?」

「う、うん…。そうだね。やってみなきゃ…始まらないよね。うん…」

「銃は…最終手段だ。まずは相手を見定める為に、俺達の持ち札だけで行く。

では…「行くぞ!!!!」


俺の言葉に割り込んで、声高らかに叫んだのはレイで。


「俺の頭の上で、ふんぞり返っているんだろ。見なくても判るよ」


そんな煌のぼやきの後。

俺達は、押し寄せる…"殺気"と"敵意"の軍勢に…臨戦態勢に入った。


「さあ…お手並み拝見しましょ」

「心していけよ。"防御本能"は甘くないからな」


まるで他人事のような情報屋とクマの笑いを背にして。


今度始まるのは、"定義(ルール)"や"罰則(ペナルティー)"に縛られ、時間に急かされた…今までのおちゃらけたゲームではなく。

俺達主体の実戦舞台。


命の危険を伴う臨場感に…気が昂ぶっているのは煌だけではない。


試してやろう。

"自由"を取り戻した俺の力が、何処まで通用するかを。


力一杯。


「戦闘開始」


俺は叫んだ。


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