シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

「ねえ紫茉ちゃん、今君は神崎家に1人でいるの?」

『ああ。朱貴が周辺を見回っている。まだ桜の姿が見えないんだ。神崎家にいるわけでもなさそうだな。とりあえずこのままの状態で一旦外に…』


その時、電話口から息を飲む音がした。


「どうした、紫茉ちゃん」

『物音が…する』


誰か…いるのだろうか。


『下からだな…。地下室…あるのか、この家』


地下と言えば…鍛錬場。

鍛錬場に…潜んで居るのか?


桜なのか?

別の誰かか?


「朱貴を待て、紫茉ちゃん」


嫌に予感を感じて僕は、彼女の行動を制した。

しかし紫茉ちゃんには届いて居ないようで、移動する音が聞こえてくるんだ。


『……。やはり、これは――』


何かを見つけたような…しかし言葉が続かないのは何故だ?


「紫茉ちゃん、朱貴を待てって!!!」


それは何か、衝撃的なモノを見たからじゃないのか。


ガタン…と、何かが転がった音がする。


それが紫茉ちゃんの手から離れた携帯だと悟るのは、紫茉ちゃんから漏れる言葉がやけに小さくなったから。


『何で…』


「紫茉ちゃん、おい、紫茉ちゃん!!?」




『桜ああああああああ!!!!』




電話口から、紫茉ちゃんの絶叫が届いた。



『誰か…誰か桜を…

朱貴、朱貴ーッッッ!!!!』



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