シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



突然頭に――

子供の歌声が鳴り響いた。



聞き覚えのある…有名な童謡。



♪かごめかごめ


どくん。



心臓が…"何か"に呼応した。

記憶に埋もれていた"何か"を刺激する。


あたしは見た。



男の左手が握りしめていたのは――



「!!!!!?」



あたしが2ヶ月前まで使っていたのと同じ…

メタルピンクの携帯だということに。


男は選ばないような携帯の色。



これは…偶然なの?


ナンデデンワヲカエタノ?


♪籠の中の鳥は 


その時、男のピンク携帯が鳴ったんだ。

ああこの着メロは。


あたしが昔設定していたものと同じで。


「!!!!」


そしてあたしは気づく。



♪いついつ出やる 


動揺していたせいか、あたしはまだ携帯を手にしたままで。

知らず先刻と同じ短縮番号を押していたことに。


玲くんの短縮番号だと思って押していた番号は…


「0(れい)」ではなく…

「8」だったんだ。


♪夜明けの晩に



8の数字は…特別性があった。

特別だから8の数字に指定したんだ。


"は"と読める"8"に。


いつまでも忘れないように。


ダレヲ?



♪ 鶴と亀が滑った



あたしが震える指先で終了ボタンを押すと、男の携帯から音楽は止んだ。



間違いない。


あれは、あたしが昔使っていた携帯だ。



♪後ろの正面



何で!!?

何で"無くしてしまった"はずのあたしの携帯を、この男は持っているの!!?

何で短縮番号「8」を押したら、あたしの昔の携帯に繋がるの!!?



あたしは――

「8」に誰の番号を入れたかったのか、思い出せない。



♪……だあれ?



金髪の男が振り返る。



同色の…

金色に輝く瞳があたしを見据えた。



♪後ろの正面……



まるで夜空に浮かぶ朧月のように、妖しげな光を放ちながら。




♪………だあれ?




知っている。

あたしは…この男を知っている。



「お前も狩られたいか?


それともお前が…俺の"マスター"か?」





――ぎゃははははは。





くらり、眩暈がした。


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