シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「ふふふ、トラックと丁度いい距離になってきたね。さすがは由香ちゃん」


濡れた視界を見れば…遠くに離れて居たトラックが、結構近い距離にあったことに気づいた。


「それに伴って浮いている銃と…銃弾数が多くなってきている。随分と多く乗り込んでいたんだ? この見えない敵はどの敵なんだろうね。まあいい。クオン、準備はいいか?」


「ニャアンッッ!!!」



「いい返事!!

防御壁(シールド)を…解く!!!」



この銃弾を止めていたのは、玲くんなんだ。

いつのまにこんなことも出来るようになったんだろう。


そして銃弾が小刻みに動きを見せた時、


「クオン此処は任せたッッッ!!!」

「ニャアアアアン!!!」


足元のクオンが…火を吹いた。


いやまあ…炎を使えるネコなのは知っていたけれど、口からゴオオオオというのは凄いもので。

異様だ。


ふさふさネコなのに。

美形でうっとりしちゃうくらいのネコなのに。


炎は…銃弾を溶かしたんだ。

あたし達に行き着く前に。


言うなれば炎の結界という奴か。


何処までも化け猫街道まっしぐら。

本人は至って気にもしていないだろうけれど。


超音波の影響はないらしい。

だけどクオンはいつものように機敏な動きを見せない。

やはりまだ、動くのは辛いのか。


だったら。

クオンが動けないなら、あたしがクオンの身体になればいい。

あたしにはあんな敏捷性はないけれど、それでも移動は出来るから。



あたしはクオンをまた両腕の中に入れると、

「とりゃああああ!! 火炎放射ネコだあああ!!!」


クオンの炎を振りまいた。


何だろう気持ちいい。

快感だ。



気づけば玲くんがいない。

玲くんは――


「ぬを!!? いつの間に!!?」


トラックの上に移動して、銃を片っ端からもぎ取るようにして奪い、1人演舞している。


何処までも優雅な舞のような体術を魅せてくれる玲くん。

紅皇サンに稽古をつけられて、雄々しい空気を併せ持ったけれど。


………。


1人しか見えないのは、ちょっと恥ずかしいかもね。

なんて、真剣に戦ってくれている玲くんには絶対言わないけれど。

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