シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「あれ…公園にイチルちゃんいないね…」


お空には煌々とした満月。

ワンワンが居たら、ウオオオンって吼えそう。


「今日だったよね、イチルちゃんが"魔法"見せてくれるのは…」

「ねえ…芹霞ちゃん。地面についてるの、何かな?」


それは黒く点々と道を作っていた。


「黒…じゃなく、赤い絵の具? 何だろうね」


芹霞ちゃんはそれを指につけて目の前に持ってきて眺めると、首を傾げた。


そんな時だったんだ。


ぴぎゃあああああああ!!!


「芹霞ちゃああん!!!?」


耳を壊しそうな、凄い音が聞こえてきたのは。


僕はガタガタしながら、芹霞ちゃんに抱きついた。


「…櫂、近いよ。こっそり行ってみよう!!!」


腰を抜かした僕をおんぶして、芹霞ちゃんは音がした方角に歩いていく。


「この絵の具と…同じ方向みたい」


ぴぎゃあああああああ!!!


「ひいいいいい!!!」


僕はまた芹霞ちゃんに抱きついた。


「芹霞ちゃん、何だろう。ねえ、何だろう!!!?」


僕はガタガタが止まらない。

芹霞ちゃんの足の動きも、迷っているみたいにゆっくりになった。


ぴぎゃあああああああ!!!


1歩進んでは2歩下がり、そして3歩進んで立ち止まり。


「あ、櫂!!! お墓に出た!!!」


お墓!!!


それだけで僕は、益々震え上がる。

幽霊、お化け嫌だ。


怖い、怖い、怖い!!!


「何か居る!!!

櫂、何か居るよね!!!?」


芹霞ちゃんの声に、恐る恐る目を開けた僕。


そこにあったのは…



「ワンワン…?」


地面で寝そべっている、沢山のワンワンだった。


< 96 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop