カプチーノ·カシス
「……ああ。どうかした?」
『ユメがね、サンタさんに頼むクリスマスプレゼント決まったから、帰りにでも買ってきてもらおうと思って』
ユメ――――夢乃(ゆめの)は五歳になる俺の娘だ。
そのあどけない顔を思い浮かべると、さらに胸の痛みは増した。
夢乃が欲しがっているというおもちゃを買って帰ると約束し、妻との電話を終えた俺は深呼吸をした。
まだ……まだ、取り返しがつく。
俺には大切な家族がいるのだから、これ以上ここにいてはだめだ。
「武内さん、やっぱりこんなことは良くない……あんなキスまでしておいて今さらと思われるかもしれないけど、俺……自分の部屋に戻るよ」
「……いやっ!」
中途半端にはだけたままのブラウスを直そうともせず、彼女はベッドから降りてこちらに駆け寄ってきた。