カプチーノ·カシス
たまたま隣に居た女子社員の手元をこっそり覗いて書き写し、何食わぬ顔で提出した。
その場で採点が行われている間、どうせ間違っているだろうと気を抜いて窓の向こうの夏空を呑気に眺めていたら、突然名前を呼ばれた。
「石原くん、それから武内さん。二人だけが、正解だ」
ええ!?
じゃあ僕がカンニングしてたのは、その武内さんの――……
ちら、と彼女の方を見ると彼女も僕と全く同じ行動をしていたらしく、ばっちり目が合った。
大きくて猫っぽい瞳……それを少し細めて僕に微笑みかけてきた彼女に、僕はその瞬間……恋をしてしまったんだ。
誰かを好きになるのなんて久しぶりで、その胸がぽかぽかとあたたかくなるような感覚に僕は浮かれた。
それまではただの入道雲にしか見えなかった窓の外の大きな雲が、ソフトクリームに見えるほど。
子供みたいだけど、本当にそう思ったんだ。