カプチーノ·カシス
「武内さん、もしかして彼みたいなのが好み?」
履歴書から目を離さないあたしに、課長が聞く。
もしかしたら、顔でも赤くなってたのかもしれない。
「ちっ……違います! あたし、スタートサンプルもらってきます!」
慌てて否定し課長に履歴書を返すと、あたしは現場用の作業着を手に立ち上がった。
危ない危ない……課長に変な誤解されちゃう。
あたしはロッカー室でスカートを脱ぎ、黄色い作業服に帽子とマスクを着けた。
これから工場に入って、生産が始まったばかりのコーヒーのサンプルをもらいに行く。
あたしたちはこれを“スタートサンプル”と呼んでる。
そして開発室に戻って、風味やL値を検査し問題がなければ内線で現場に連絡し、そのまま生産を続けていいと許可を出すのだ。