カプチーノ·カシス
「絆創膏貼ってあげるから立って」
課長が腰を上げ、救急箱のある棚に近づく。
私はのろのろと立ち上がると、いつもより冷たく見えるその背中に声をかけた。
「自分でできます……課長に、無駄な仕事させたくないですから」
「……そう」
課長はそれだけ言うと、デスクに戻って自分の仕事を再開した。
……悔しい。こんなくだらないことで課長に叱られるなんて。
基本的に優しい課長がこんな態度になるのは珍しいことだ。
いつまでもあたしがこんな状態じゃ、課長からも石原からも、いつか信頼を失っちゃう……