カプチーノ·カシス


ハルは腰掛けるのに丁度良い高さの段ボールを見つけるとほこりを手で払い、そこに座りながら口を開いた。


「まさかお前が同じ会社の人間だとは思わなかった」


さっきまでの挑戦的な態度は消え、本当に驚いたという口振り。

あたしはそんな彼に面食らってしまって、会ったらすぐに言おうと思っていたあの言葉は飲み込んで、ハルに話を合わせた。


「あたしも……驚いたよ、すごく」

「いつもどうしようもない姿晒し合ってんのに、昼間ネクタイ締めて会う方が緊張するなんておかしな話だよな」

「……ハル、緊張してるようには見えなかったけど」

「そうだろうな。俺はナミと違って顔に出さねぇから」


コイツ……今朝のこと言ってるのね?

あたしはその時の自分を思い出し、カッと顔が熱くなった。

あのときのハルは、あたしのうろたえる様子を楽しんでいたに違いない。


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