カプチーノ·カシス
午後――あたしはあのあとお昼も食べず、仕事に集中していた。
もう二度と、今朝のように仕事と関係のないことで課長に怒られたくなかったから……
厄介なハルのことはとりあえず頭から追い出し、この間作った二種類の試作品に改良の余地がないか、色々な資料とにらめっこする。
「……愛海ちゃん、機嫌悪い?」
不意に声をかけてきたのは、向かい合わせのデスクに座る石原。
「え? 別にそんなことないけど」
「そう? すごい恐い顔してたよ」
「……石原には関係ない」
集中してるんだからもう話しかけないで、と冷たくあしらうと、石原はごめんと俯く。
こいつ……こんな可愛くない態度を取るあたしのどこが好きなんだろ。
そんな疑問が頭に浮かんだけれど、今は仕事仕事!と気持ちを切り替えると、あたしはまた“恐い顔”に戻って資料に目を落とした。