カプチーノ·カシス


「そんなに気負わなくていいよ。一日目は仕事だけど、二日目は観光も――」

「「「二日目!?」」」


課長以外の全員が、声を揃えてどよめく。

あたしたちがそんなに食いつくとは思ってなかったらしい課長は一瞬面喰ったような顔をしながらも、詳細を説明してくれた。


「……ああ。結構遠いし日帰りだと疲れるかなと思って、市内のホテルに一泊する予定で総務部にも申請を。あ、二日目は土曜日だから何も考えないでそうしちゃったけど、武内さん何か予定あった?」

「な……い、です」


泊まり……? 課長と一緒に泊まり……?

本当に、そんな夢みたいなことあっていいの?


「じゃ、問題ないね。いつも頑張ってるご褒美と思って楽しんで? まぁ俺みたいなオジサンとじゃつまらないかもしれないけど……」

「そんなことないですっ!」


力んで答えたあたしに、課長は柔らかく微笑んだ。

この間切ない思いをしたばかりだというのに、あたしの胸は飽きもせずに彼にときめく。

朝礼が終わって仕事が始まっても、あたしの脳内はもう完全に、課長と二人だけで楽しむ大阪観光へとトリップしていた


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