カプチーノ·カシス


「――新商品の開発を頼まれた。ベトナムロブスタを多く使うことで、今より安い価格帯の家庭用ドリップコーヒーを作れ、との指示だ」


ベトナムロブスタ、というのはロブスタ種の一種。

いくつかそれを使った商品をうちの工場でも作っているけど、どれも二割程度のブレンドに留めている。

と、いうか……二割が限界なのだ。

それ以上入れたら、どうしても強い苦みが出てしまうから。


「無理ですよ、課長。わざわざ不味いコーヒー作るってことになりますよ?」


そう言ったのは石原だ。

……あたしもその意見に賛成。

まずくなるとわかっていて商品を開発するなんて、なにか間違ってると思う。


「……俺だって、会議でそう言ったさ」


ひどく疲れた様子で持っていた書類を無造作にデスクに放った課長が、どかっと椅子に腰を下ろしてあたしたちを見た。


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