【完】愛の血−超勝手な吸血鬼


こんな偶然ってアリ?

口をポカーンと開けて、見上げたままのあたしに気付いたのか、椎名冬夜がゆっくりと視線を落とした。


「は!?」


目を見開き、驚いた顔。

今まで聞いていた声より、ちょっとだけ高くなった声。

口を閉じると眉間に皺を寄せて、あたしを睨んだ。


「何でお前がいるわけ?」

「なっ! そ、それは、こっちのセリフですー」

「チッ。うぜぇ」


あたしから目を逸らしながら呟いた一言を、聞き逃さなかったあたし。


うぜぇ?


今、うぜぇ。って言ったよね!?


はぁぁぁぁぁ!?


何で、あたしがそんな事言われなきゃなんないわけ?

食いついてやろうか、そう思った時だった。


「冬夜、女の子にそんな口聞いちゃ駄目って言ってるでしょ?」


椎名冬夜のお母さんがあいだ入り、言うタイミングを逃してしまった。


はぁーっと長い溜息をつく、あたし。

そ知らぬ顔をする、椎名冬夜。


その態度すら……ムカツク。
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