風に恋して
リアが豪勢な食事を前に俯いていると、レオが部屋に入ってきた。

レオに気づいたシェフや侍女が頭を下げるのに頷いて、彼はリアの向かいに座った。リアは手を膝の上に置き、口を引き結んで下を向いた。

「食べないのか?」

レオに問われたが、答える気になれずリアはキュッと唇をかみ締める。テーブルにたくさん並べられた皿にはリアの好物である料理が盛り付けられている。

居心地が悪い。

シェフも侍女も、リアを知っている。

「リア様、スープだけでもお飲みください。今、温かいものにお取替えしますから」
「いりません。ごめんなさい。お腹が空いていないの。全部下げてください」

リアはシェフがスープ皿を下げようとしたのを止めた。

今は、何も食べる気がしないし、喉を通らない。例え新しく温かいスープを出してもらっても無駄にしてしまうだけだ。

「しかし、お昼も何も召し上がらなかったのです。それではお身体に障ります」

そんなリアにシェフは困り果てたようにチラッとレオに視線を向けた。

「いい。下げろ。お前たちももういい」

レオがため息をついて立ち上がり、シェフと侍女に出て行くように命じた。そしてカタリナに鍵を渡す。

「明日の朝一番にここに来い、いいな?」
「は、い……」

カタリナは何か言いたそうな表情になったが、言葉にはせずグッと鍵を握り締めて頭を下げた。
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