風に恋して
――それと時を同じくして。

めちゃくちゃになった交流会の会場を整える喧騒を聞きながら、ユベールはテラスから少し離れた大きな木に寄りかかっていた。

「本当だったんだね?リアが赤い瞳を持ってるって話」

ユベールは手に持っていた一輪の花をくるくると人差し指と親指で回しながら楽しそうに笑う。

「これで、信じていただけましたか?」
「うん。信じるよ」

思い出すのはリアの翡翠色の瞳がじんわりと赤く染まっていった光景。血が滲むようなそれは、まるで破壊の宴の始まりだった。

これほどに欲しいと思った力は今までなかった。ユベールにはない力――ルミエール王国に本当に必要な神の力は間違いなく“赤い瞳”だ。

リアを手に入れたなら……ユベールの力もきっと増幅させることができる。いい武器になる。

「ていうか、別に疑ってたわけじゃないし。でも、君の計画は失敗しちゃったね?」
「いえ……そちらの方はいいのです。代わりに、とても良い収穫がありましたので」

ユベールと同じようにクスリと笑ったその人影。その手を開くと花びらが風に舞った。

淡い桃色の、花びらが――
< 183 / 344 >

この作品をシェア

pagetop