風に恋して
「水を差すな」
「いえ、そんなつもりはありませんでした。すみません」

その笑顔が黒いのは気のせいではないと思う。

「まぁいい。イヴァンたちが戻ってきたら、記憶修正できるか?」
「そうですね。2人の気を分けていただければ、完全に修正が終わるかと」

セストが頷くと、リアが首を横に振った。

「ううん、もう大丈夫。セストさん、ありがとう。それに、えっと……」
「エレナです!ディーノ兄さんの妹です!」

リアの視線にエレナがピシッと背を伸ばして自己紹介をする。

「そっか。エレナさんもありがとう。あとは自分でできると思うから」

リアが2人に向かって微笑む。

「しかし、まだ体力が戻っていらっしゃらないのでは?」
「レオが力をくれたから、残っている分くらいなら平気。それに、自分の記憶だから余計な力は使わなくてもいいし」

リアはベッドから降りようと身体を動かした。
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