風に恋して
「やっと婚約者から卒業だな?」
「レオのせいで順番が逆になっちゃって、どうしよう……」

先ほどからリアが心配しているのは主にそれらしい。人前に出ることが苦手なリアだから、国民の前に出るのが不安なのかと思っていたのだが……

「俺の、せいか……?」

レオが眉をひそめると、セストがクッと笑ったのがわかった。それを睨みつけるとセストは涼しい顔をして姿勢を正す。

「リア、大丈夫だ。この歓声はみんなが祝福してくれている音だろ?」
「うん……」

レオがリアの頬にキスをすると、リアの表情が少し和らいだ。

「お2人とも、そろそろお時間です」

セストの声が響く。

「さぁ、行くぞ」
「うん」

そして2人の姿がバルコニーに現れると、一際大きな歓声が上がった。割れんばかりの拍手を受けて、リアがホッと力を抜く。

2人は手を取り合って、国民へと礼をして、レオが挨拶をしていく。

そして、止まない拍手と歓声の中、『きゃははっ!』と楽しそうな風が吹き抜けた。

国民たちが1輪ずつ持っていた花の花びらが、ふわりと舞い上がる。それは空を覆いつくすように浮かんでレオとリアに降り注いで。

その小さな王子の祝福の中、2人は口付けを交わした――
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