風に恋して
レオが執務を終えてリアの部屋に行くと、リアは眠っていた。そっとベッドに近づけば、頬に涙の跡。レオはベッドの淵に座り、それを指先でなぞっていく。

「リア」
「――っ」

レオの声に、リアがゆっくりと目を開ける。その目は真っ赤に腫れていた。ずっと、泣いていたのだろう。

レオを瞳に映した瞬間、リアの表情が怯えたものに変わる。咄嗟にベッドから抜け出そうと上半身を起こしたが、レオはその身体を引き寄せた。

「いやっ」
「リア。何も、しないから……」

身を捩るリアの背中を優しく叩く。幼子をあやすように。

「いや……離して……っ」

リアがレオの胸についた両手にグッと力を入れる。だが、レオはその手を自分とリアの身体の間に挟み込むように、リアの身体を一層引き寄せた。

「――っ」
「何もしない。ただ、少し……話を聞いてほしいだけだから」

レオはリアの首筋に頬を寄せ、ギュッと抱き締める腕に力を込めた。背中を優しく擦り続けたまま……

しばらくそうしてやると、本当にそれ以上触れてこないことに安心したのか、諦めたのか……リアは大人しくなった。

リアの抵抗が止んだところで、レオは少しだけ腕の力を緩めて口を開いた。
< 46 / 344 >

この作品をシェア

pagetop