風に恋して
リアは今、レオのことを夢に見ている……?

それは、今のリアにとって苦しいことではないのだろうか。

「夢ですからあまり影響はないと思います、と言いたいところですが……」

セストが珍しく歯切れ悪く呟く。それからふぅっとため息をついて、続けた。

「リア様の場合は自分自身の記憶がおかしいことをこの城での生活で感じているはずですので、精神的につらくなるかもしれません。偽物と本物の記憶の間でリア様の心が壊れやすくなります」

ほんの少しのきっかけで、リアの記憶が呼び覚まされてしまう。特に今はまだ、リア自身が偽物の記憶を信じようとしている。それを捨てきれないままでは、彼女の心が正常な状態を保てない。

「記憶修正について調べてはいますが……」

記憶修正――リアの偽りの記憶を、彼女に負担を掛けずに正す呪文。脳に施す呪文のため、難易度はかなり高い。1日2日で習得できるものではない。

だが、セストなら、あるいは。

「記憶については……お前に任せる。だが、自然に思い出せる可能性もあるんだろ?」
「私がマスターできるかどうかは別問題ですよ。自然回復も見込めないことはありませんが、それはリア様が“納得”しなければいけませんから」

リアの心の安定が最優先。

リアが自分の記憶喪失を認め、本物の記憶を求めたとき――真実を受け止めようと心から思わなければ、必ず歪みが生まれてしまう。

「あぁ……とにかく、リアの周囲に一層気を配ってくれ。俺もなるべくリアのそばにいるようにするから」
「承知しました」

セストは礼をしてリアの部屋を出て行き、レオはそのまましばらくリアの寝顔を見つめていた。
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