風に恋して
「リア様、お食事は?」

窓に手をついて、ずっとぼんやりしているリアにカタリナが声をかけてくる。リアは微かに首を横に振った。

「しかし……ここのところ、また召し上がっていないですよね?」

数日前、レオと中庭で何かあったらしいというのはカタリナも察しているだろう。それが原因でまた食欲をなくしていることにも気づいているはずだ。

後で食べるから、と置いていってもらっている軽食はバルコニーから小鳥にあげている。たくさん用意してくれるそれらが少食のリアに食べきれないことも、雨の日にはすべてが残ってしまうことも、元々気づかれているのだからと……開き直って。

(私……)

わからないのだ。リアが食べたいと思うものは、本当に自分が食べたいものなのか?リアの行動は、リアの意思のはずなのに、すべてが偽りのような気分になる。

チラつくレオの漆黒の瞳。

それは、リアが求めているものなのか。

それは植えつけられた記憶を持つリア?それとも、本物の記憶を持つリア?

わからない。

リアは何がしたいのだろう。本当のリアの意思は、一体どれだというのだろう。

リアが窓から離れてベッドに戻ろうとすると、カタリナがリアの前に立った。

「リア様、もうすぐシェフがこちらに来ますから」

そう言って、リアをテーブルへ促そうとする。
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