もの書き。
8話
10月7日(日曜日)
今日は初めて彼の方から

メールが来た。

携帯の上の方に

彼の名前が白い文字で浮かび上がった。

来た時間は17:46

内容は『なっちゃん、今日暇だったら

僕と高橋さん歌うんで

LIVEに来てください(^-^)/』だった

どうやら今日はバンドで出るわけではないらしい

行きたかったが

急だったので

さすがに親に止められた。

私『すみません。親にダメといわれました。
またライブがあったら教えてください。』

彼『わかった!ありがとう』

彼からくるメールはいつも

『ありがとう』か『いいえ~』だ

私から話したいことはたくさんあるのに

伝えることができない。

つながっているからこそ

つながっていないことを思い知らされる

不便な機械だ。


10月12日(金曜日)
今日は穏やかだ。

青く晴れた空には雲がみあたらない。

朝は少し肌寒かった

私の住んでいる町の

「今日の最高気温」は24度らしい

まだ夏のなごりがある日差しを

秋風が柔らかくさえぎってくれる。

彼は今頃何をしているだろうか?

まだ寝ているだろうか?

今まで何気ない事を

このノートにつづってきたけれど

もし誰かがこの日記を見たとして

おもしろいと感じる人はどのくらいいるだろう?

きっとこの世界で

たった一人私だけだろう

その時その時の喜びや悲しみは

どうしても

本人にしかわかり得ない部分がある

彼が隣にいるだけで手をつないだ時くらい嬉しい

彼が一緒に話してくれるだけで抱きしめられた時ぐらい嬉しい

これを純粋と言うのなら

私は大人になりたくない。

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