囚われの華
一本の電話
「嘘よ!!そんなことありえないわ。」

体が諤々と震えるのを抑えながら遥は叫んだ。

今朝までは変わらない日々を過ごしていたのに。

父、西園寺彰は日本有数の複合企業の社長であり、古くから続く華族の出である一族の総帥で。

母である君香はエレクトロニクスを主に扱う企業の一人娘で二人は政略結婚し、私が産まれた。

政略結婚とは思えないほど二人の仲は良く、相思相愛で未だに娘である私もあてられるほど。

二人の間には私しか子供がおらず、そのため蝶よ、花よと大切に育てられた。

私立のお嬢様学校に幼等部より入学し、勉学に励み、この春大学を卒業したばかり。

知識、教養は勿論のこと、容姿も人並み以上に優れていると周りから絶賛されていた。

両親から溢れんばかりに愛をそそがれて毎日楽しく過ごしていた日が、この日を境に消え去るなんて思いもしなかった。


「遥ちゃん、いますぐ帰ってきて!!大変なの。お父様が!!」

そんな電話が入ったのは遥がこの春から働き始めた水島銀行の終業時刻間際だった。

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