悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~
5.大切なもの
長谷部に連れられて入ったのは、会社から徒歩5分ほどのところにある定食屋だった。
何回か長谷部とともにここに来たことはあるが、年が明けてから来るのは初めてだ。
昔の日本家屋をイメージした内装はどことなく落ち着いた雰囲気を漂わせている。
二人はランチメニューを頼み、向き直った。
「……で? 何があったんだ?」
「長谷部さんには関係ないことです」
「……やっぱ荒れてんな、お前。奥さんと何かあったのか?」
長谷部の言葉に、玲士は無言で水の入ったグラスを傾けた。
どういうわけか長谷部は他人の心の機微に鋭い。
……特に色恋沙汰に関しては。
無言の玲士を、長谷部は腕を組んで興味深げに見つめる。
「冷静沈着を絵にかいたようなお前が、荒れるなんてな~」
「別に荒れてるわけでは……」
「そうか? ま、お前の場合は多少荒れた方が逆に人間らしいさ」
長谷部は楽しげに笑いながら言う。
その探るような視線にどことなく居心地の悪さを感じ、玲士は視線をそらした。
そんな玲士を長谷部はじっと見つめて言う。