悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~
二章

1.初出勤




1/5。

灯里はバス停から会社へと続く道を足早に歩いていた。

今日は新しい会社の初出勤日だ。

会社は墨田区の押上駅の近くにあり、灯里が住んでいるマンションからはバスで通うことができる。

契約社員としての採用で、勤務時間は9:00~16:00。

仕事内容は忍村商事の時と同じ営業事務だ。

服装は自由と聞いているが、皆がどんな格好なのかわからないため今日は無難にスーツにした。


「……あと15分、か」


灯里は腕時計で時間を確認し、近くのコンビニに入った。

ちなみに腕時計は去年の誕生日に玲士に贈られたものだ。

文字盤には夜光貝と白蝶貝が花の形に埋め込まれ、それに沿って小さなエメラルドが並んでいる。

肌にしっくりと馴染むこの腕時計を灯里はとても気に入っていた。


灯里はコンビニで飲み物を買い、出ようとした。

そのとき。

灯里とすれ違うように店内に入ってきた男の人と肩がぶつかってしまった。

その拍子にバッグの脇ポケットに入れてあった定期入れがポロッと落ちてしまう。


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