悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 3~
5.黒い想像
<side.玲士>
20:30。
玲士は自室の窓際に置かれた机の前でノートパソコンに向き直っていた。
灯里は今日、歓迎会で遅くなる予定だ。
玲士は机の脇に置いた携帯をちらりと一瞥し、パソコンの画面に視線を戻した。
画面に表示されているのは、灯里が務めている宮村精機の去年の有価証券報告書だ。
有価証券報告書は会社がその年の決算を終えた後に作成する資料で、上場している会社は決算終了後、3か月以内にこれを提出しなければならない。
有価証券報告書はインターネット上で公開されているため、投資家はいつでも会社のデータをチェックすることができる。
「……当期純利益は5期連続黒字、収益構成も悪くない。自己資本比率は低いが、今期のキャッシュフローはまあまあ、か……」
玲士は宮村精機の会社業績をチェックし、軽く息をついた。
灯里には言っていないが、灯里が宮村精機に就職を決めた時、玲士は念のため会社の業績をざっとチェックしていた。
せっかく意気込んで会社に入っても、その会社がすぐに倒産したのでは元も子もないからだ。