純潔の姫と真紅の騎士
作り笑いが上手な人だ、とアネモネは思っていた。

本当は笑えない理由を持っているはずだ。

アネモネはそれを知りたかった。

けれど、”さとり”として思いや気持ちを見ようとしても、彼女からは何も感じず、何も聞こえない。

何かが彼女の思いを覗こうとするのを邪魔してくるのだ。

それは、彼女が逃げてもずうずうしく、しつこく見えない黒い重たそうな鎖で自分と彼女を繋いでいようとしている黒い靄なのか、それとも彼女自身なのk。

もしくは、その両者なのか。

”急に静かになってどうしたんですか?”

アネモネはハッとして、ウサギの人形を強く抱きしめた。

「いやぁ、何でもないよぉ。ただねぇ~、少しさぁ、お姉ちゃんの過去を聞きたいなぁって思っていたところさ」

すると、スイレンは黙り込んでしまった。

それでも、広角は楽しそうに少しあがっている。

「ねぇ、君の過去を教えてよぉ。ねぇ、君は一体ダレなんだい?」

その時、スイレンが辺りを見回して、おろおろしたような行動を取った。

しかし、アネモネにはそんなことどうでもよかった。

ただ、彼女の過去を、彼女の口から聞きたいばかりに、思わず叫んだのだ。

「どうして何も言ってくれないんだ!!」

その瞬間、アネモネの周りが暗闇へと変わった。

”スイレンの何を知ろうとしている”

「”さとり”の邪魔をしていたのは、やっぱりあなたか」

"スイレンの心は無だ。さとりをしても意味なんぞない”

「僕はあなたに聞く耳を持たないようにしているんだ」

”はっ。よく言う。お前は我の―――なんだ。それを忘れるな”
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