黒の森と、赤の……。/ ■恋愛シミュレーションゲーム□
今度は逆に、俺が自分のシートの上に逆向きに膝立ちする形で、着席した司を見下ろす。


「お前汚いぞ!?
俺の好きなやつを聞いてきた時はあんなにアグレッシブに追求してきたくせに、自分が同じことされると黙るのか!?
困ったらすぐに黙秘権か!?
すぐに黙秘権を使うような卑怯者だったのかお前は!?
え!?
そこんとこどうなんだ司!」

「どうなのよ司くん!」


俺の口撃に、すかさず小町屋も便乗する。

さすがに裕也はそこまではしないようだったが、シートに座ったまま、やっぱり興味深げにこちらの様子をうかがっている。


俺と小町屋の言葉責めに司は、

「うるさい…!
うるさいうるさい!
卑怯者で結構だから、もうその質問するな…!」

と、相変わらずうつむいたまま答える。

悔しそうに真っ赤にした顔を見れば、高飛車なお嬢様を言葉責めしたみたいな、なんとも言えない興奮が、胸の中で高まっていく。

俺は、普段クールで頭のいい司がこんな反応するもんだから、ついつい面白くなりすぎていた。

それは小町屋も全く同じだったらしく、さながら2人のどS心に火がついたようだ。


…否。

火をつけちゃったのは司だ覚悟しろ!


俺と小町屋はさらに司のほうに詰め寄り、さらに司を追い詰める。


「だいたい司!
お前は昔から…!」

「隣りのクラスの子って誰なの!?
それあたしより…!」


……その時。

そんな楽しい雰囲気に、全くそぐわないような異常事態が、突然……起きる。



ガタンッ!



「…な、なに、今の振動…?」

「バスのタイヤが、何か踏んだのかな…?
それとも……」


不意に発生した、車内全体を襲った振動について、小町屋と俺が感想を述べようとした、


その、直後──。
< 18 / 129 >

この作品をシェア

pagetop