実鳥森の少年の初恋
のどかな早春の昼下がり

マリモが帰ってから、普通の生活にもどった
ジンたちです。

マイにも、マリモが無事に「森の精人界」へ
戻ったことは話していました。

結局、マリモがなぜ人間界で花を売っていたのか
よくわからないままでしたが、
また、くると言っていたマリモに
今度詳しく聞いてみることにして
ふたりの秘密にしていました。

どんどん月日が過ぎていきます。
もうすぐ小学6年生になるふたりです。

ジンとマイは、ますます仲良くなっています。
ペリドは、相変わらず人間界を楽しんでいて
いつもいっしょに遊ぶ仲間になっています。

実鳥森で遊ぶことが多い2人と1羽です。

今日は、マイとジンは、実鳥森の近くの
花畑で遊んでいました。

レンゲソウの花がどこまでも続いています。
ふたりで花輪を作っているところです。
ペリドの頭に載せる分も作っているのです。

ペリドが、近くの木にとまって
楽しみに待っています。

マイがジンに教えながら仲良く作っている姿を
ペリドは、優しい気持ちで眺めていました。

「できた!」
「はい、ペリド、頭に載せるわよ」
マイが嬉しそうにペリドの頭に
小さな花輪を載せます。

すると大きすぎたようで
するっと落ちて首輪になっています。

「あらら」「大きすぎたね」
ジンが、がっくり頭を下げています。

(まぁ、これもいいな。かっこいいかな)
ペリドは嬉しそうです。

「そうね。かっこいいわ。ペリド」
マイが楽しそうに笑っています。

そして自分たちの分の花輪も
お互いに頭にのせはじめます。

ジンの目を見つめていると
時折深い緑色に見える不思議な瞳が
きらきら輝いていて・・
マイは、思わず顔が赤くなってしまいました。

ジンも、マイの頭に花輪をのせながら
頬が赤くなったマイを見つめて
可愛いなと、思ったとたんに
耳まで真っ赤になってしまっています。

お互いに恥ずかしさを隠すように
無言で爽やかな春の風を感じて
空を見上げるふたりです。

こんな日がずっと続くといいな。
ジンは、目を閉じて幸せな気持ちで青空を眺めながら
花畑にころがります。

「ジン、寝ちゃだめですよ」
マイが、声をかけます。

「大丈夫だよ~」ジンが答えます。

のどかな早春の昼下がりの風景です
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