ジルとの対話

「オルフェウスは、音楽で岩を動かし、ケルベロスを眠らせた。」
「作り話だろ。」
キースが呆れたように言った。
「月があんまりに大きなものだから、家の中は囁き声に溢れたんだよ。」
灰色の瞳を持っている、エレガントなモーニングを着込んだ青年が言った。
「今晩。彼はキース。こちらはスターリン。僕のドライバーだ。」
ジルがキースに紹介して、スターリンが会釈すると、キースの心持ちも軽くなった。異常と思われた空間も、きちんとした人間関係が築かれているなら、人はストレスを感じないものだ。
「彼は、僕を手伝ってくれるんで助かってる。ボローニャに行った時に知り合ってね。結局一緒に暮らす事にした。」
スターリンは珈琲に角砂糖を5個入れるので、キースはきっと好かないだろうと、ジルは酒を持って来てやった。
それなりに品の良いりんご酒であるが、 ビールをキースは好んだ。
酒が入ると3人ともねんごろになって、
あること無い事話して大騒ぎした。
あの音楽家は最高だとか、あの女優は良い顔立ちをしているが、歌はまるっきりダメだと笑いあった。
< 3 / 34 >

この作品をシェア

pagetop